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実在する『ハインライン・デモクラシー』

 読者諸兄の多くは、あまりにも荒唐無稽且つ突飛な発想に戸惑われたことだろう。「なんだやっぱりただのSF小説じゃないか。こんなウソ話をこんな場所に持ち出したりして、お前はいったい何が言いたいのだ」そう思われる方がいたとしても不思議ではない。

 だが前回も述べたように、現代の欧米SFとは極めて高度な思考実験の域に達しているのだ。たとえフィクションであれ、現実に立脚した科学的根拠がない限り、作品として世に提示することなどとても出来ないのが現状なのである。そしてこの作品世界内では、この『志願兵制制限選挙』制度が、過去の人類が生み出したいかなる制度よりも相対的に上手く機能している、とされているのである。

 何故か。全ての説明が、ハヤカワ文庫版でいう三二三ページから三三一ページにかけて、レイド教官と士官候補生たちとの質疑応答という形でなされている。本当は全文引用したくて堪らないのだが、あまりにも膨大な文章量になるため、申し訳ないが本文は読者諸兄が各自であたっていただきたい。ここではその中でも最も重要と思える、レイド教官のこの言葉だけを引用しておきたい。

 「わしは、はっきりしていることを述べる。つまりわれわれの機構(引用者注・『志願兵制制限選挙』)の下では、あらゆる有権者および公務員(引用者注・つまり全員が退役軍人)は、個人の利益に優先してグループの福祉を考え実行するという困難な職務を自発的に行う人間なのだ。(中略)そいつは知識が足りないかもしれないし、市民の美徳について心得違いをしているかもしれない。だが、歴史上のいかなる支配者たちのそれよりも、そいつのふだんおこなっていることのほうが、はるかにすぐれているのだ」


 まだ御納得いただけないだろうか。

 では視点を変えて、この作品内で『志願兵制制限選挙』と比較対象されているもう一つの制度を見てみよう。つまり「兵役の義務と参政権とがどうしても切り離せないのなら、全ての者に兵役を強制し、代わりに全ての者に参政権を保証する制度=『徴兵制普通選挙』制度という選択肢も有りなのではないか?」

 ここでようやく話が現実世界に繋がってくる。つまり『徴兵制普通選挙』制度なら何もフィクションの世界に題材を求めなくとも良い。この世界にいくらでも実例が存在するからであり、しかもその代表が左翼の大好きな民主主義最先進国=北欧4カ国だからである!

(続く)
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