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少なすぎる義務条項?

 今回から、現行憲法でいう第三章、すなわち「国民の権利と義務」に関する考察に入る。

 「憲法とは、統治権力に対する国民からの命令である」という大原則に基づくならば、まさにこの条項こそが憲法全体の根幹をなす、最重要課題と断言しても差し支えはあるまい。

 だが、前述の大原則をまるで分かっていない(分かろうともしていない)保守派諸氏の多くは、この条項がひどくお嫌いらしく、中には中川八洋のように「そもそも憲法には、『権利』など書かないのが正統である(!)」とまで極言したり(森有礼かお前は!)西部邁のように現行憲法の権利条項のうち、何と十四箇条も削減してしまえ、などという、政権与党にすら到底受け入れられないような暴言が平気で罷り通っているのが現状である(最も、こうした保守派陣営の憲法無知を嘲笑して止まない左翼陣営も「では一体、どうやって統治権力に国民の言うことを聞かせるのか?」というパワ-ポリティクスの大原則をまるで理解出来ていない点では保守派と目クソ鼻クソであり、それはこれまでこのブログで私が散々述べてきた通りなのだが)。

こうした保守派陣営の憲法無知を象徴する言葉が例の「現行憲法は、義務条項が権利条項に比べて極端に少なすぎる」という常套句であろう。何しろ前述の大原則に基づくならば、権利条項が義務条項より多くなるのは当たり前。いやそれどころか「そもそも憲法には、『義務』など書かないのが正統である(!)」とまで極言する事も不可能ではないのだから。

 とはいえ、本来は『上級国民』を意味する「シチズン(英語)」「シトワイヤン(仏語)」の訳語であったはずの『市民』という言葉を「権利だけは一人前に主張するが、義務はなるべく果たしたくない私たち」という意味に歪めた上で盛んに用いる勢力が、未だにそこら中にはびこっている戦後日本の状況の中で「義務条項など必要ない!」とばかりに、いきなり全文削除してしまったりしたら一体どうなるか?

  「税金? ケッ誰が払うか! 憲法には『国民には納税の義務がある』なんて一言も書いとらんやろうがアホ!」などとほざく輩が続出するであろう事は請け合いである。

 そもそも戦後日本に限らず、世界中のほとんどの憲法に(本来は必要ないはずの)国民の義務条項が存在しているのは一体何故なのか?

 深く考えるまでもない。どんな統治権力も国家を維持し、国民の生命・財産・権利を守るという仕事を果たす為には、ある程度のコストを支払わざるを得ず、その負担を自分たちが負わざるを得ないことは、責任ある国民ならば当然承知している(はずだ)という前提があるからだ。

 「だからお前たち(=統治権力)は、これこれこの程度の義務を我々(=国民)に課すように」と国民のほうが統治権力に命令しているのが憲法の義務条項なのである。ここでも前述の大原則は貫徹されているのだ。

 (続く)
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