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 渡部昇一の「極論」

 前回では、最近とみに高まりつつある、保守右派による「現行憲法第96条の規定に基づいた、合法的改憲」を求める流れに対し、本来「現行憲法それ自体(もちろん第96条も含めて)に効力はない」とする我々保守左派は、論理的に賛同してはいけないのではないか、という疑問を提起した。

  これについては、前回でも名前の出た渡部昇一が、竹村健一日下公人との共著で最近(注:平成15年・キリスト歴2003年当時)出した本『すべては歴史が教えてくれる―戦後民主主義の迷妄を解く』(太陽企画出版)の中で、面白いヒントを示してくれているので紹介したい。

渡部昇一


  言うまでもなく、渡部昇一と言えば、保守右派の中でも最も極端な強硬派として知られる人物である。

 「米軍占領下で日本に主権がなかった昭和20年8月15日から昭和27年4月27日までの間に制定された法律は、憲法はもちろん、教育基本法も労働基準法も含めてことごとく無効である」とする彼の主張には、我々の中にさえ、そのあまりの過激さに驚いてしまう者が少なくない。

  もっとも、渡部のこの主張については、過激さ云々以前に、そもそも本質的に慣習法である憲法(以前掲載の小室直樹の著書『痛快!憲法学―Amazing study of constitutions & democracy』を参照)と、れっきとした成文法である他の法律とを混同してしまっているという点で大きな問題があるのだが、それはさておき、渡部のこの主張に対し、さすがにいくらなんでもそれは極端すぎると感じたのか、同書のなかで、共著者である竹村と日下は「まあ占領下にできた法律でも、良いものであれば主権を回復した後に追認すればいいわけですからねえ」という意味のフォローを入れているのが笑える。

  つまり、この竹村・日下の論法に従うならば、「主権のない占領下にできた法律は無効である。ただしそのような法律でも、主権を回復した後に議会か何かがそれを追認すれば、その時点からその法律は有効になる。たとえば労働基準法なら、昭和40年に行われた最初の改正から以降は有効になっている」というわけだ。

 確かに一理ある理屈ではある。

  この論法を、今回の憲法改正論議に当てはめるとどうなるであろうか。

  まず我々は、現行憲法の効力を「認めない」。したがってその憲法の一部である第96条に基づいた「合法的改憲」も認めない。ゆえに「合法的改憲」を前提とした、現在の改憲論議に我々は参加してはいけない、というのが当初の理屈である。

  だが、そのような我々の意志とは関係なしに、今現在この国の権力を握っている保守右派による「合法的改憲」が本当に実現してしまった場合、その新しい憲法は、果たして「自主憲法」の名に値するのだろうか。

 感情的には「それは効力のないインチキ憲法の条文に基づいて行われたまがい物の改憲であり、したがってやはり効力はない」と言い切りたいところである。が、そうは問屋が卸さない。そこには「憲法制定権力」という、非常にやっかいな問題が顔を出してくるからだ。



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