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「宰相=君主」?

 いうまでも無いことだが、「大統領=President(プレジデント)=国家元首」と「首相=Primeminister(プライムミニスター)=最高行政官」とは、全くの別物である。そして私は、「国家元首を直接選挙で選ぼう」などとは一言も言っておらず、あくまでも「最高行政官を直接選挙で選ぼう」と言っているだけなのである。

 それをいきなり「『首相公選制」とは実質『大統領制』のことである」などと言い切られてしまうと、私にはまるで「『宰相』とは実質『君主』のことである」と言ってるも同然に聞こえてしまい、奇異な印象をどうしてもぬぐえなくなる。大体そんな奇妙なことが実際に起こりうると言うのなら、何がどうやってそうなるのか、具体的理由をきちんと論証する必要があるだろう。

 それなのにこの「日本会議」に限らず、副島隆彦氏にせよ、鷺田小弥太氏にせよ、私が今までに目にした保守的立場からの首相公選制反対論は、皆「首相公選制は大統領制に道を開く」といきなり論理を飛躍させるものばかりで、何故、どういう過程を経てそうなるのかという点を、きちんと論理的に説明しているものが一つも見当たらないのである。「バカの壁」とは、まさにこういう意思疎通の不能状態のことをいうのだろうか。

 先の『新憲法のすすめ』ではこう述べられている。

 「古来、天皇が『政治的権威』の中心であり続けることができたのは(中略)天皇不親政の時代にあっても征夷大将軍の任命などを通して天皇は絶えず現実政治との関わりを持ち続けられたからに他ならない。(中略)たとえ天皇に首相の形式的任命権が認められたとしても、共和制的要素は現行(昭和)憲法以上に一層濃厚なものとなろう」

 ちょっと待って欲しい。

 それを言うのなら、戦前の天皇だって、御一人の御判断で勝手に首相を任命できたわけではないだろう。

 戦前においては、天皇はまず「誰を首相にしたら良いか」という御下問を元老に対して行い、それに元老が「この者がよろしいかと存じます」と御推薦申し上げることによって首相が決まっていたのだ。戦後においては、その御下問相手が「十数人の元老」から「数百人の衆議院議員」へと拡大されたに過ぎない、とも考えられるのである。

 私の唱える首相公選制も、要はその延長線上にあるに過ぎない。

 すなわち、天皇陛下にとっての御下問の相手を「数百人の衆議院議員」から「数千万人の有権者全員」へと、さらに広げようと言っているだけなのである。

 首相を任命するのはあくまでも天皇陛下。我ら国民は、「誰を首相にしたらよいか」という陛下の御下問に対し、直接選挙を通じて「この者がよろしいかと存じます」と御推薦申し上げるだけなのであり、それのどこが日本の国体と相容れないのか、私にはさっぱり分からないのである。

(続く)

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