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わが前文私案解説

 さて、わが前文私案である。

 前々回にも予告したとおり、この拙文は小林節・慶応大学教授の唱えられる「合法改憲路線」と「民族の主体としての国民主権説=民族主権説」に基づいて私なりに頭をひねったものである。

小林節


 世界各国の憲法前文を比較参照してみたところ、どの国の前文の構成もまず

① いつ、誰がこの憲法を制定したのか(=憲法制定権力の特定)。
② この憲法により保護される価値とは何か(=憲法の目的)。

 の二項目に大別され、さらに比較的新しい憲法には

③ 国際社会への貢献の希望(=国家目的の拡大)。

 を付け加えるというのがパターンになっているようである。また、このうち②についてはさらに

ⅰ 統合・安全・平穏といった治安の保護。
ⅱ 自由・平等・福祉の増進といった人権的価値の保護。
ⅲ 文化・伝統・政体といった国家的アイデンティティの保護(これは前文よりむしろ「第一章」となる「総則」または「基本原則」などに箇条書きで記されることも多い)。
ⅳ 正義・公正・友愛といった道徳的価値の保護。

 などに細分化され、前述のわが前文私案も、各段落がそれぞれ①②③に、②内の各文節がそれぞれⅰⅱⅲⅳに対応した構成になっているのはご覧のとおりである(ただしⅲとⅳは独立した文節ではなく、ⅳの価値基準はあくまでもⅲに基づいて決定されるものであることを接続節「且つそれに基づく」で示し、価値相対主義による文意の混乱をあらかじめ排除している)。

 本私案は、まず予告どおり「我ら日本国民は」の一節で始まり、この憲法の主語=主権者が日本国民であることを暗示している。

 ただしそのすぐ後に「我らが主君と仰ぐ日本国天皇陛下」という決定的な一節を入れることにより、この憲法における「日本国民」とは、あくまでも天皇を自らの主君と仰ぐ者に限られること、すなわち皇室伝統を拒否する者は「日本国民=主権者」の地位から排除されることをこの文章のなかに含意させているのである。

 なお、穏健派のなかには、この一節の持つ大仰さにたじろぐ向きもあるかも知れない。だが世界の憲法前文には

「畏れ多くも全能の神の恩寵により」(オーストラリア)
「神の至高と法の支配を認める」(カナダ)
「神と人間に対する責任を自覚し」(ドイツ)
「全能の神の佑助を祈願し」(フィリピン)

 といった具合に、価値の根源を超越的なものに求める文言など、別に珍しくもなんともないのである。

 「自由と民主主義に基づく国家秩序は、社会の主軸となる価値基準があってこそ初めて機能し得る」(伊藤博文)という格言を、我らは今こそ思い出すべきであろう。

(文責:オカルト君)


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