※ この記事は平成17年(キリスト歴2005年)に発生した福知山線脱線事故(死者107人、負傷者562人)を受けて書かれたものです。
古い事故ではありますが、これにより露呈された
鉄道産業の諸問題は未だ解決には程遠い状態であることもあり、あえてここに再掲いたします。
不公平な競争
しかしそれにしても何故、こんなにも儲からない業種に
鉄道はなってしまったのだろうか。
実は『
鉄道斜陽論』は、欧米ではすでに半世紀近くも前から囁かれていた。
「スピードでは飛行機に勝てず、値段の安さでは高速バスに勝てず、便利さではマイカーに勝てない。こんな中途半端な乗り物が21世紀に生き残れるはずがない。いずれ
鉄道は都市近郊の通勤路線を除いて全廃されるさ」というのが当時の世界の風潮であり、事実アメリカではそれに近い状態に現在はなっている(但し、長距離貨物
鉄道はアメリカでも生き残っている)。
たまたま日本では、東海道新幹線が
『世界交通史上最大の奇跡(!)』とまで言われるほどの画期的大成功を収めたことから『
鉄道斜陽論』が一時はすっかり鳴りを潜めてしまったわけだが、しかしよく考えてみると、新幹線以外の、在来線が抱える根本的問題は何一つ解決されてはいないのだ。
大体考えてもみて欲しい。
バス会社や航空会社と違い、鉄道会社は、車両だけではなく、それを走らせる線路や駅といった地上施設の維持・補修までも自前でやらなければならないのである。
公共の施設である空港や道路を借用すれば良い飛行機や自動車とは、すでにこの段階からして条件が全く違っている。
よく東京―大阪間での『新幹線vs航空機』の乗客争奪戦が経済誌などで話題にされるが、そもそも極めてアンフェアな、不利な条件下での競争を最初から鉄道は強いられているのであり、これでは地方の中小私鉄が、マイカーとの競争に次々と敗れ去っていくのも当たり前だと言わざるを得ない。
東海道新幹線は、あくまでも『世界交通史上最大の奇跡』であり、特殊な例外なのだ。
にも係わらず、である。
このような不公平な条件がすでに明白であるにも係わらず、現代日本の交通行政、なかでも地方自治体の交通行政が、この問題に対し、全くの無頓着であるのは一体どうしたわけか。
彼らは言う。
「鉄道の線路なんか、一民間企業の私有物じゃないか。そんなものの整備に公金など投入することはない」そして「道路や空港のような公共施設にこそ公金を投入すべきである」として、誰も使わないような無駄な空港や高速道路を、今もせっせと作り続けているのである。
最初から赤字経営が確実なのに!
しかもそんな道路や空港が出来たせいで、地元の鉄道会社はますます乗客を失い、経営が苦しくなっているのである。まさに
公共交通の共倒れ。地方交通の自殺行為であるとしか言いようがないではないか! (続く)
(文責:鉄ヲタ君)
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