『デュアル為替レート』とは何か?
つまり現代の「変動相場制」下においては、各国の為替レートは原則市場によって決められている。だが国によっては、今でも「ペッグ制」などといって自国通貨を他国のある特定通貨にリンクさせることによって、固定的な為替レートを維持しているところもある。中国の人民元などがまさにその典型であろう。
ラビ=バトラ博士のいう『デュアル為替レート』とは、この「ペッグ制」を逆手に取り、極端な貿易不均衡のある特定の国に対し、輸出か輸入のどちらか一方にだけこの「ペッグ制」すなわち固定相場制を採用しようというものである。いわば為替のダブルスタンダード制だ。
例えばA国とB国との間では、A国側の貿易赤字が極端に大きいとする。そこでA国では、自国からB国への輸出に限り国際外国為替市場よりはるかに自国通貨を安くした固定為替レートを採用するのだ。
するとどうなるか。
B国では、それまでよりはるかに安い値段でA国の商品を手に入れられることになり、A国からB国への輸出は急増することになるだろう。しかも通常の為替レート変動とは違い、B国からA国への輸入には従来どおりの国際外国為替レートが採用されるわけだからこれでB国からA国への輸入が急に減るわけではない(つまりB国がこの政策に反対する根拠もない)というわけである。
なるほど。確かに貿易不均衡是正策としてはそれなりの効果が期待できる方法だろう。だが現代日本の貧困問題を解決する手段としてはこの『デュアル為替レート』、残念ながらそれほど効果があるとも思えない(少なくとも短期的には)。
たとえば貧困問題解決策として日本政府がこれを導入するのであれば、真っ先に考えられるのは「中国からの輸入為替レートの円を、国際外国為替市場より安く設定する(=中国製輸入品の国内価格を上げる)」であろう。だがこれは先の例とは異なり、自国輸出品の大幅な減少を余儀なくされる中国政府からは猛烈な抗議を受けることになる。しかし、だからといってその逆に「中国への輸出為替レートの円を、国際外国為替市場より安く設定する(=日本製品の中国価格を下げる」というのでは、儲かるのはトヨタやキャノンだけとなり、国内貧困問題の解決にはやはりなんの役にも立つまい。
やはりこの方法には限界がある。ラビ=バトラ博士自身も「いずれ誰かがもっと有効なアイディアを考え出すまで、このデュアル為替レートは、今日のアメリカの製造業を生き返らせる唯一の手段といってもいいでしょう」と語っているように、これはあくまでも対症療法的な、さしあたりの解決策でしかないのだ。
ではプラウトは、現代のこの猖獗を極めるグローバライゼーションに対し、なんの根源的対抗策も打ち出せないのであろうか。
……実をいうと、一つだけ方法がある。
それは過去のラビ=バトラ著作群のなかでもただ一度、『ラビ=バトラの大予言』(総合法令)の一八〇ページから一八二ページまで、たった二ページ分だけ言及されたことのあるあの方法である。
(続く)
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