「自由貿易」は貧者の敵か?
こんな調子で元請けから製品を買い叩かれ、泣く泣く値引きに応じたあげくますます経営が苦しくなり、従業員のリストラや労働強化でやむなく資金繰りを補わざるを得なくなっている中小零細企業経営者の方が、本紙(この当時に小論を掲載していた政治紙)読者のなかにもきっとおられることと思う。
まさしくこれこそが「グローバライゼーション」というものであり、日本に「格差社会」をもたらした元凶の、そのもっとも分かりやすい例の一つであろう。
このような「発展途上国からの格安輸入品攻勢」がもたらす貧困の問題に対して、プラウトは一体どのような処方箋を用意しているのであろうか。
『ラビ・バトラの世紀末大予言』(徳間書店)や『貿易は国を滅ぼす』(光文社)などの初期作品でのラビ=バトラ博士の回答は、比較的単純かつ原始的なものであった。
つまり「自由貿易が諸悪の根源なのだから、関税をかけて国内産業を保護すれば良い。それは先進国内の貧困化を阻止したり発展途上国の伝統産業や暮らしを保護したりするだけでなく、巨大タンカーなどの過大な輸送によるエネルギー浪費と環境汚染とを防ぎ、また関税による収入は政府の財政危機回避にも役立つ」というものである。
正論である。が、同時に非現実的でもある。
以前、何かの記事で貫通信C君が「反グローバライゼーションは、現代の尊皇攘夷でしかないかもしれない」というような意味の懸念を表明していたが、事実インターネットなどの急速な発展やそれによる高度情報社会化、また今や中国との密接な関連なくしては語れなくなってしまった日本製造業の現状などを見ても、関税障壁による「単純保護貿易主義」などというやり方は、時代遅れなだけでなく、国外市場や海外からの資金流入の道を閉ざし、かえって日本経済の首を締め上げる結果になってしまう恐れが非常に高いといわざるを得ないであろう(それ以前に「日本国内さえ豊かなら、他の発展途上国は貧しいままでもいいのか!?」という全く別方向からの批判も考えられる)。
さすがに博士も「今どき関税障壁なんてとてもムリ」と判断せざるを得なかったのだろう。近著の『グリーンスパンの嘘』(あ・うん)や『新たなる黄金時代』(同)では、関税障壁に代わる新たな貿易均衡策として『デュアル為替レート』なるものを提案されている。
(続く)
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