新自由主義者も決して反対できない『独占強制分割法』
広告代……いや違った(笑)某産業分野の企業間シェア配分が、例えば次のようになっていたとする。
業界一位……A社二五%
同二位……B社一三%
同三位……C社一二%
同四位……D社一〇%
同五位……E社九%
これでは業界上位五社のシェア合計は六九%と、軽く過半を超えてしまうことになり、即座に公正取引警察の手が入ることになるであろう。そしてまず業界第一位のA社が強制企業分割を強いられることになる。
何を基準に分割するか。例えば地域別に分ける(例JR)、あるいは業務内容別に分ける(例NTT)など様々な方法が考えられ、実際には各企業ごとに臨機応変に対応することになると思われるが、最低限これだけは必ず守らなければならない原則として、例えば次のようなものが考えられる。
① 分割されたどの企業も(元の業種分類に基づいて)必ずシェア一〇%未満となるように調整されなければならないこと。
② 分割されたどの企業も、なるべく同程度の規模となるよう、またその後の未開拓市場もなるべく均等になるよう配慮しなければならないこと(本州三社と三島会社の間で大きな企業格差があるJRのようなやり方はダメ! ということ)。
以上の原則に基づけば、例えばA社には次のような強制分割が行われることになる。
⑴Aa社(シェア九%)
⑵Ab社(シェア八%)
⑶Ac社(シェア八%)
そして改めて業界順位を並べなおすと次のようになる。
一位……B社一三%
二位……C社一二%
三位……D社一〇%
四位……Aa社九%
同四位……E社九%
これだとシェア合計は五三%となり、まだ過半を超えていることになる。そこで次は業界新一位のB社を次のように強制分割する。
⑴Ba社(シェア七%)
⑵Bb社(シェア六%)
そして業界新順位は次のようになる。
一位……C社一二%
二位……D社一〇%
三位……Aa社九%
同三位……E社九%
五位……Ab社八%
同五位……Ac社八%
これで上位五社のシェア合計は四八%となり、ようやく過半数を下回ることになるわけだ。
なぜこんな回りくどいやり方をするのか。それは大企業同士が闇カルテルを組んで自企業のシェアを作為的に調整し、誰も独占強制分割法(独占禁止法改め)に違反していないかのように見せかける談合行為を防ぐ効果があるからだ。
国家間の同盟関係もそうだが、およそ本質的に競合関係にあるもの同士の協定だの連携だのといったものが機能しうるのはせいぜい「三国同盟」までであり、参加者が四を超えた途端にどんな盟約も有名無実化してしまうのは人類の歴史が指し示しているとおりである。
そしてこのやり方なら、例え談合企業間だけで意識的にシェアを低く抑えていても、他の企業のシェア次第でいきなり『独強法(独禁法改め?)』違反の捜査が入ることもありえ、談合自体を無意味にさせてしまうことが可能なのだ(同時に、自企業単独でいくらシェア一〇%を超えていようとも、業界第二位以下の企業が極端に弱すぎる一人勝ち状態のときには『独強法』違反にならない可能性も高いため、企業が違反を恐れるあまり萎縮し、事業拡大を自主規制してしまうといった事態も防ぐことができる)。
- 関連記事
-
-
要は公正取引警察の権限だ! 2018/06/15
-
新自由主義者も決して反対できない『独占強制分割法』 2018/06/08
-
2 独占強制分割法と公正取引警察 2018/06/01
-