PROUTの三原則
実際、ラビ=バトラ博士の全著書を読破したとしても、この理論の全体像を把握することはほとんど不可能だ。なにしろこの理論、基本的にはあくまでも経済学でありながらその考察対象はきわめて広く、教育論から医療論・農業論・科学技術論はては宗教論にまで及んでしまうという、とてつもなく浩瀚なものなのだから。
とはいえ、その中心を成すものはやはり経済理論であり、私の見たところ、その核は次の三つの原則に集約されると考えられる。
すなわち、
① 従業員株式所有制
② 独占強制分割法と公正取引警察
③ GDP比例式最高・最低賃金法
この三つである。
「格差社会」が何かと問題視される現在と違い、キリスト暦80年代なかば頃までの日本ではむしろ保守派文化人連中が「日本は格差がなさ過ぎる。もっと貧富差を広げるべきだ」と嘆くのがごく当たり前の風景だった(もっとも、保守派文化人そのものの絶対数が少なかったため、世論を形成するまでには至らなかったが)。
その頃の保守派による現代日本批判の典型的なものの一つに、こういうものがある。
「日本人はそもそも『所有権』という言葉の意味も、資本主義という経済システムの本質も分かっていない。企業とは本来、それを運営するために金を出した者、すなわち株主の持ち物に決まっているのに、前近代的な(バカ)日本人どもときたら、まるでそれが従業員の持ち物でもあるかのように勘違いしておる」
純理論的に言えば、確かにこの批判は正しい。そしてこの保守派文化人どもの願いどおりに実現した「正しい資本主義」が、現在の株主至上主義経営(どんな手段を使おうと株主を儲けさせる経営が正しい!)である。
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