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天皇陛下から賜った『人権』

 西洋では「人権は神から賜った」というフィクションに説得力があったからこそ一般大衆にまで人権思想が普及し、それを定着させることが出来た。だがキリスト教文化圏ではない日本で人権思想を普及させるためにはその手は使えない。
 
 では、どうするか。

 多言を要するまでもないだろう。明治の元勲なかでも特に伊藤博文は、様々な語録や公文書の中で、それに対する明確な回答をすでに語っていたのだ。

 「西洋においては、キリスト教が社会の主軸(=人々の行動を律する道徳律として機能していること)となっているからこそ、やれ自由だ、人権だ、民主主義だなどと騒ぎ立てても、それで社会の秩序が壊れるようなことはない。だが残念ながら日本社会には、それに相当するような社会の主軸がない。キリスト教は日本には定着し得ないし、仏教や神道にもそれに取って代われるような社会的影響力はない。唯一、天皇主義だけが、キリスト教の代わりを務められるだけの社会的影響力を持っている。だから日本で自由主義やら人権思想やらを社会に浸透させようとするならば、好むと好まざるとに拘らず、天皇主義を社会の主軸に据えるより他はないのだ」

 正確な引用ではないが、おおよそ以上のような意味の発言を伊藤は残している。そしてそれが文字通り実行されたのが明治の立憲君主体制であり、サヨクの言う「近代天皇制」の始まりでもあったのだ。

 神の代用品としての「天皇制」!

 そんな木に竹を接いだような政策が、いかに多くの歪みと害毒を後の日本社会にもたらしたかは、三島由紀夫の痛烈な「近代天皇制」批判(『日本改正案 三島由紀夫と楯の会』毎日ワンズ刊の一三七頁)を挙げるまでもなく、誰の目にも一目瞭然のことであろう。

 だが、たとえどんなに不完全かつ畸形的なものであろうと、この「近代天皇制」のおかげで自由やら民主主義やら人権思想やらがある程度日本社会に定着出来たのは否定しようのない事実である。そしてその「近代天皇制」を徹底的に全否定するくせに、それに取って代われるような新たな「社会の主軸」を、戦後バカ左翼どもが結局何ひとつとして生み出せなかったことこそが、日本社会の人権状況を未だに中進国レベルのままに止めてしまっている最大の原因であろう。

 無論だからといって、すでに一度大破綻を冒している「近代天皇制」をそのまま単純復活させるわけにもいくまい。日本の人権状況とは、これで中々一筋縄ではいかない性質のものなのである。

 (続く)
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