2016年03月のエントリー一覧
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徴兵制普通選挙か志願兵制制限選挙か
どちらがより優れた制度であるか。実を言うと、とっくの昔に答えは出ている。 兵隊の強さは、①傭兵→②募兵→③徴兵の順になることぐらい誰にでも分かることだろう(但し傭兵は、イザというとき全く役に立たないのだが)。小銃ぐらいしか扱えない徴兵と、ハイテク兵器を使いこなす傭兵や志願兵。どちらが強いかなんて小学生でもわかることだ。三島由紀夫が徴兵制に反対していた(意外に思われるかもしれないが、これは歴然たる事実...
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実在する『ハインライン・デモクラシー』
読者諸兄の多くは、あまりにも荒唐無稽且つ突飛な発想に戸惑われたことだろう。「なんだやっぱりただのSF小説じゃないか。こんなウソ話をこんな場所に持ち出したりして、お前はいったい何が言いたいのだ」そう思われる方がいたとしても不思議ではない。 だが前回も述べたように、現代の欧米SFとは極めて高度な思考実験の域に達しているのだ。たとえフィクションであれ、現実に立脚した科学的根拠がない限り、作品として世に...
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『スターシップ・トルーパーズ』とはどんな話か?
「なんだフィクションか」 前回末尾に記した私の一文で、こう白けられた読者諸兄も大勢おられよう。しかし一方では「なるほどそう来たか」とニヤリとされるSFファンの方も、きっと居たに違いないと私は信じている。 そう。何もアイザック・アシモフやアーサー・C・クラークの名前を出すまでもない。 欧米、特にアメリカSFの最高レベルの作品群ともなれば、それはもはや日本のお子チャマなSFモドキ作品などとは比べよう...
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『ハインライン・デモクラシ-』とは何か?
命を賭け、身を危険にさらしてでも自らの属する共同体を護る。この最も実行困難な義務を果たし得た者にして初めて、その共同体の運営に口出しすることが許される――このような権利観は、欧米諸国ではごく普通に認識されていることである。 古代ギリシャで、奴隷を兵士に流用しようとした時、一旦彼らを解放して自由民にした後、改めて兵として徴募するという迂遠な手続きをわざわざ取ったという話も、要するにこの権利観が生きて...
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税金払ったくらいで主権者面すんな!?
※ 前回のこの連載末尾で、私が以前ある老人から聞いた話として「戦前の日本では、全て臣民は納税の義務を負う代わりに参政権を得るという具合に……」とあるのは「……全て臣民は納税の義務を負う代わりに自由権を得、兵役の義務を負う代わりに参政権を得るという具合に……」の間違いでした。そもそも私は、納税の義務と参政権との間には何の相関関係もないということを言いたいがためにこの言葉を引用したのに、これでは意味が全く逆...
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税金払えば参政権?
ではそのような「国家を維持し、自らの生命・財産・権利を守るために必要なコストをも敢えて引き受ける」覚悟を持った「主権者としての責任感ある」国民像と、前述した「納税拒否野郎」のごときエゴイスティックな現実の国民との間にあるギャップを、我々は一体どう処理すべきなのか。 その前に、権利と義務との関係について、もう少し詳しく調べてみよう。 「在日外国人も日本国民と同じ条件で納税の義務を果たしているのだか...
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少なすぎる義務条項?
今回から、現行憲法でいう第三章、すなわち「国民の権利と義務」に関する考察に入る。 「憲法とは、統治権力に対する国民からの命令である」という大原則に基づくならば、まさにこの条項こそが憲法全体の根幹をなす、最重要課題と断言しても差し支えはあるまい。 だが、前述の大原則をまるで分かっていない(分かろうともしていない)保守派諸氏の多くは、この条項がひどくお嫌いらしく、中には中川八洋のように「そもそも憲法...
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『連邦体験』が生んだ知恵
元々ヨーロッパでは、複数の国家が合邦して一つの連邦国家を作ったり、逆に連邦が解散して複数の国家に(平和的・合法的に)分裂したりといったことは、歴史上何度も繰り返されてきたごく普通の経験である。 合邦のパターンにも色々あるが、典型的なものの一つに、合邦する複数の国家間で『連邦条約』とでも言うべきものを結び、合邦後は、その条約がそのまま新連邦国家の憲法になってしまう、というものがある(例・アメリカ...
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「最高法規」と国際法
まずは現行憲法の第九八条を見てみよう。 「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅および国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない」 ご存じ、最高法規条項というやつである。つまりこの国においては、この憲法こそが最高の価値基準であり、この憲法に反するいかなる命令も規則も一切無効、というわけだ。しかしこの条文、そのすぐ後には、何故か次のような第二項が続...
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9条1項の正しい解釈
憲法について多少勉強された方なら誰でも知っている通り、現行占領憲法の9条1項というのは、左翼が盛んに喧伝しているような「世界に類を見ない先進的条文」なんかでは実は全くない。前述の『パリ不戦条約』の条文を、そのままなぞったものに過ぎないのだ。 「だから我々も昭和天皇の御遺志を尊重し、(パリ不戦条約そのままである)9条1項については追認する。しかしこの条約では、自衛戦争は勿論『陸海空軍その他の戦力...