2016年01月のエントリー一覧
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「法人主権説」の正体
そもそも法人主権説とは、一体どのような学説なのだろうか? 勘の良い読者の中には、この「法人」という言葉を聞いて、戦前の「天皇機関説」を連想された方もおられるかもしれない。 そう、まさにそのとおり! この「法人主権説」とは、「天皇機関説」の論理をそっくりそのまま主権論に流用してきただけのシロモノでしかないのだ!↑ 美 濃 部 達 吉 すなわち、国家を一つの法人と見なし、天皇でも国民でもなく、この法...
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『天皇教』にも宗教改革が必要だ!
ここまで書けば、前々回に私が述べた「憲法に違反する奴」とは、もっぱらこの「君側の奸=天皇の権威を独り占めする者ども」のことを指していることがお分かりになるだろう。 かつて山本七平氏や小室直樹博士らは、西洋におけるプロテスタンティズムのような近代化の原動力としての役割を、日本においてはもっぱら『天皇教』(神道とは厳密に区別された意味での)が務めたことを解明した。↑ 山 本 七 平 氏 だが一方では...
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某読者氏からの批判に答える
前回の拙文に対し、某読者氏(注:平成16年=キリスト歴2004年当時にこの小論を掲載していた新聞の読者のことです)から非常に重要な問題点をついていると思わせる批判が二つ届いたのでここで紹介したい。 ① 「それでもし憲法に違反する奴が出たら」とは何事だ! 貴様は、天皇陛下が自ら御定めになった憲法を、自ら破られることがあり得るとでもヌかすつもりか! ② 「皇室の伝統は本来『不執政』」などと簡単...
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「明治憲法」体制はなぜ破綻したのか
が、そうなると当然のことながら、次のような疑問が湧いてくるのを抑えることはできない。 「その『天皇主権』をまさに明文化していたのが戦前の明治憲法だったんじゃないか。天皇が主権者としてそんなに信頼できる存在であるのなら、なぜ戦前における、陸軍の暴走を止めることができなかったのだ?」 当然の疑問である。 確かに「天皇主権」をなんのヒネリも無くそのまま打ち出した場合、実現するのはただの官僚専制政治でし...
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天皇畏るべし!
前回では、現行憲法の基本三原則の一つである「国民主権」が、そもそもわが国では成り立ち得ない―わが国の「国体」には馴染まない、などといった曖昧な理由によるものではなく、根本的に実行不可能である→たとえ無理やり憲法の条文に「国民主権」の字句を盛り込んだとしても、それが実現することは絶対にない(論より証拠、戦後日本を見よ!)―ことを論証した。 さて、「国民主権」が実行不可能ということになると、残された選...
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日本国民に「主権者」たる資格などない!
では欧米ではどうなのだろう? 日本と違い、かの国々では一応「国民主権」という前提が機能しているように見えるが? 彼らは一体、どうやって「リヴァイアサン」を手なずけることに成功したのだろうか?↑『リヴァイアサン』著者、トマス・ホッブス 歴史をひも解けば、答えは簡単に見つかる。 すなわち日本と違い、かの国々では、少なくとも過去に一たびは、国民が「リヴァイアサン」を打ち倒した=「市民革命」を成功させた...
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「リヴァイアサン」に命令?
以前の本ブログで私は「『新しい憲法をつくる国民会議』の発表した憲法案の前文は、主語が明確になっていない」と指摘していた(新憲法の主体は誰かを参照のこと)。 つまりこの憲法は、「誰が誰に向けて発した命令」なのか、言い換えれば「この憲法を発した者=この国の主権者」が誰なのか、この憲法案の前文からは読み取れない、と私は言ったのだ。 ちなみに、旧明治憲法の主語は天皇であった。すなわち天皇が主権者であ...
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我々「保守左派」の取るべき姿勢
このことは同時に、大塚英志の唱える『憲法原理主義』(占領下だろうとなんだろうと、形式的な手続きをきちんと踏んで改正した以上、現行憲法は有効だ、とする立場)を否定するもう一つの根拠にもなりえよう。たとえ占領下でなくとも、憲法の基本的原理を歪める改正など許されるはずがないのだから。↑ 宮澤俊義 もし護憲派が宮澤俊義の『八月革命説』あたりを持ち出してきて、あくまでも「現行憲法は有効だ」と言い張るのなら...
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卑怯なり井上ひさし!
マスコミ文化人のなかでも、大塚英志と並ぶ強硬な護憲派として知られる井上ひさしが、5年前(注:平成16年=キリスト歴2004年当時から見て。つまり平成11年=キリスト歴1999年のこと)に日本共産党の不破哲三と共著で出した本『新・日本共産党宣言』(光文社)の98ページから101ページにかけて、大体次のような意味のことを述べている。 「第96条の手続きに従いさえすればどんなふうにでも憲法を変えられる...
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新憲法の主体は誰か?
その内容についてもしかり。 ざっと一読したところ、この新憲法案の前文では、「日本の伝統、文化」とか「天皇制の堅持」(この天皇「制」という言葉も問題なのだが)といったことを謳いあげながら、同時に「自由」「平等」「民主主義」といった戦後民主主義的な言辞をも並列させ、ついでに「自然との調和」といった最近流行りのエコロジカルな言葉を、まるで新趣向でもこらすかのように飾り付けただけ、といったような印象であ...